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合コンにおける地理の話

東京人は、合コンの最初の30分を地理の話題に費やします。

東京人は自覚をしていないようなのですが、会社に入ってから東京にきた私にとっては、これは大きな発見でした。大変な疎外感を感じました。

最初に、「家はどこ?」「会社はどこ?(or大学はどこ?)」という会話から入り、トリビアの応酬が始まります。

「●●線の乗り換えって、混むよね」「そこだと始発があるから座れるよね」的な会話が延々となされます。

どうやら、住んでいる地域や、勤めている場所で、何かを推し量っているような雰囲気を感じます。

当時、住まいは杉並区浜田山でした。合コン市場ではなかなか優位だったようです(といっても独身寮ですが)。

いいところじゃん!としばしば言われるのですが、純西日本人の私にはなぜかさっぱりわからず、当然会話も続きません。

とにかく、最初の30分はダンマリを続けざるを得ないのです。

しかし、中盤戦になると関西人は能力を発揮します。

自分を殺して笑いを取るのはお手の物です。そう、関西では、おもろい奴はエライという価値観なのです。

特に私は男子校出身かつ体育会出身という斯界の王道を歩んでいるため、なかなかの実力者であると自認しています。

しかし東京は価値観が違います。

「この人、ウケるー」などと盛り上げられて、すっかり調子に乗っていましたが、その違いがわかるまでに相応の期間を要しました。

東京人は、地理のわからない田舎者には、決して心は(体も)開かないのです。

合コンも終盤戦になると、最後のツメの段階に入ります。合コンも営業も同じで、何よりもクロージングが大事です。

連絡先を聞くのは基本で、できれば二次会に連れていく、そして自宅まで送るというのがベストソリューションです。

そこで、地理のわからない私は窮地に陥ります。せっかくいい感じだったのに、地理がわからない(=二次会向けの二人でしっぽり飲める雰囲気のよい店を知らない)ために、誘えないのです。

そもそも独身寮まで帰ることすら怪しい私にとって、自宅まで送るという曲芸は圧倒的に無理です。もっといえば、この店に来ることすら連れて来てもらえないと無理だった人なのです。

独身寮の仲間が一緒にいる場合、途端に去勢された犬のようにおとなしくなり、「連れて帰って」とお願いします。

その仲間がいない場合、独身寮まで帰ることは大きなチャレンジです。地下鉄の路線図の前で脂汗を流して立ち往生したことが何度もあります。とにかく山手線にたどり着けば、何とか帰れる、というレベルでしたね。

こんな人には、いくらトークが面白くても、心は(しつこいようですが、体も)開かないのが東京人です。

それから幾星霜、私も大人になりました。地理にも詳しくなり、スマホという魔法の杖もゲットし、迷うこともかなり減りました。しかし残念ながら、そういうロマンティックな出会いもなくなりました。諸行無常の響きを感じます。