一ミリも役に立たない文章です
大学4回生の夏。
北海道大学で行われた七大戦(七帝戦)で優勝した我々(同期の6人)は、一週間の北海道周遊を経て、小樽から福井県小浜までのフェリーに乗りました。
今でも忘れられないのがフェリーの乗船口で我々の前に並んでいた青年です。
顔はのび太君風の平凡な顔立ちでしたが、なんと髪型が『あしたのジョー』だったのです。
それに一番最初に気づいた私は、「彼、髪型がジョーやで」とささやきました。大いにウケました。その後、丸一日をフェリーで過ごしたのですが、「トイレにジョーがおったで」「ジョーがうどん食べてたで」などとジョーの動向をずっと追い続けました。
今でもジョーのことをたまに思い出しますが、不謹慎なことに、いつでも心の底から笑ってしまいます。
フェリーに乗って一息ついたところで、一人がボソッと言いました。「カネある?」
特段何も考えずに周遊していた我々は、まったく収支を考えずにいて、みんなが「誰かがちゃんと計算してるやろ」と意味不明な信頼感の中で過ごしていました。
みんなで有り金を出したところ、小浜駅から京都駅まで帰ることができないことが判明。
本来、どうするかを考えるべきところ、とにかく丸一日フェリーの中にいるので、「後で考えよう」と後回しにしました。
フェリーの中では、トランプを取り出して、ずっと甲板のテーブルで「大先輩」をやっていました。
「大先輩」とは、トランプゲームの「大富豪」と全く同じルールです。ただし、大富豪を4回生、富豪を3回生、平民を2回生、貧民を1回生と呼びます。また、後輩は先輩に対して押忍言葉をしゃべらないといけません。
ちなみに、「先輩ゲーム」というのもあります。これはご想像の通り、王様ゲームとまったく同じです。
私は某大物OB(40代以上は知っている)の物まねが得意だったので、ひたすらその物まねをかましつつ、「大先輩」を楽しみました。
普段、先輩の前で大物OBの物まねをするわけにはいかないため、合宿での芸大会など数回しか披露していません。
もちろん、後輩を先輩である私が笑わせる必要はありませんので、後輩の前でやることもありませんでした。
なので、先輩後輩からは「なんかおもろいらしい」と思われていたようです。そんなヴェールに包まれた芸でしたが、同期の間では、24時間365日やっていました。
あの厳しい空手道部の4年間を、この物まねで乗り切ったといっても過言ではありません。
そんなこんなで小浜に降り立った我々は、例のおカネ問題に直面しました。
全員に平等に分配すると、滋賀県の真ん中くらいまでしか行けず、誰かに集めると、2人が京都まで帰れるが、残りのメンバーは小浜で足止め、というくらいの金額でした。
結構深刻な議論でしたが、結論は「有り金で飲もう!」という意味不明なものになりました。
時あたかも夏だったので、小浜駅の待合いで朝まで雑魚寝をするという作戦です。
まずは腹ごしらえ、ということでカレー屋ココイチに入り、一番安いポークカレーを食べました。ほうれん草をトッピングした私は白い目で見られました。
そのあとコンビニでビールとつまみを買い、待合いでひとしきり飲んでから、寝ました。
翌日、京都在住の同期の親に連絡し、全員が帰れるだけのお金を持ってきてもらい、みんなで帰りました。大変申し訳なかったと思います。そのお金を返したかどうか、覚えていません。返していないような気もします。いわゆる「ごっつぁん」です。
4回生の夏。あのクラブにはまったく色恋沙汰はありませんでしたが、これはこれである種の青春だったと思います。