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親の仇のように、高いスーツを買う

東京に来たばかりのころ、合コンで女性が「私、シップスでバイトしてたの」と言った。

私はてっきり船(=ship)でバイトをしていたのだと思った。

(そういえば、借金まみれの人がマグロ漁船とかに放り込まれて何カ月も働かせられると聞いたことがある。きっとそれだ)

と考えた。

新社会人かつ初上京の私は、初めて会う類型の人ばかりだったので、「んなわけないよね」という自分の常識がマヒしていたのだ。

「苦労したんやね」

などと話していたのだが、なんか雰囲気が違う。シップスで働いていたことを、なんとなく誇らしい感じで語っているのだ。周囲のT大やK大出身の仲間たちも、しかるべく話を合わせている。

どうやら、何かを売っていたことは分かった。

(そうか、マグロ漁船は男ばかりで体力勝負なので、女性は購買部みたいなところで物販していたんだ。かわいそうに)

と思った。

T大:「どのお店?」 女子:「吉祥寺」

(吉祥寺?聞いたことがある。横浜は港があるので、そのへんか。漁港か)

K大:「あの色のコートが好きでさー」 女子:「あれは人気で売り切れたのよ」

(冬の漁業の仕事は寒いから、コートが売れるんやろで。色はどうでもええやろ。というか何でこのK大は漁業やってんねん)

まあ私の合コンはずっとこんな感じだったので、そのトーク力の割にはモテることはなかった。

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その数か月後、新宿か渋谷を歩いていて、「SHIPS」のお店を見つけて、驚愕した。なんと、オシャレショップだった。

「このことだったのか!」

すべての疑問が氷解した。

ある程度お金を自由に使えるようになってから、こういうブランドショップで、親の仇のように高いスーツを買うことがあるが、あの頃の周囲と話が合わなくてみじめな自分に対する復讐のようである。